今井町公民館 ー「ミチコオノ日記」読者集会所ー

旧称:「ミチコオノ日記」読者日記もしくは私的ファンサイト

第17話「土と虹」の感想

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〈文:高岡ヨシ〉

 

人が何かを表現する時、その人の想いがそっくりそのまま見る人に伝わるのは、とても稀な事だと思う。

 

どんなにシンプルで分かりやすい作品でも、受け取り方は人によって違うし、引っかかるポイントも、やっぱりてんでバラバラだ。

 

予想の出来ない受け取り手の反応というのは、野球のそれに似ている。

 

内角を突いたつもりが右に流され、外へ逃げたはずなのに、三塁線へ引っ張られる。

ど真ん中に投げた球を見逃される事もしばしばで、きわどく攻めてもファールですかされる。

ボコボコに打ち込まれる試合もあるが、個人的にはそれでいいと思っている。

いや、むしろその方が楽しい。

 

タネあかしをした手品ほどつまらないものはないし、食べる手順を一から十まで指定してくるラーメン屋では、息が詰まってしまう。

 

勝手な考えだが、どんな作品にも、その根底には鏡が存在していると思う。

読み手の過去、記憶、思考、言うなれば、読者自身そのものを映し出す一枚の鏡。

 

作者である、ミチコオノ氏がどういった想いを伝えたくてこの17話をリリースしたのか、正確なところは本人にしか分からないが、自分の底にあった鏡を通して、とても強いメッセージを受け取った。

それが正しいか正しくないかは定かではない。ただ、少々乱暴な言い方になるが、正直、答えはどうでもよいと思っている。

 

新作を出すという情報は入っていたので、いつもより一時間早く起きて机に向かったのだが、一枚の絵のせいで、家を出るのが十五分も遅れてしまった。

遅刻するギリギリラインなのは分かっていたが、どうしても腰を上げられなかった。

 

 

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この絵だ。

この絵が時間を掴んで離さなかった。

 

自分はこの絵を知っている。

正確には、この表情をした十六年前の自分を知っている。

 

水平線より下に向けた視線。

真っ暗の中で頭を抱え、こんがらがってグチャグチャになっていた。

 

狭まった視界。

冷蔵庫の音。

頭の中で鳴るチャイム。

 

この絵を見て、全部蘇った。

 

 

深呼吸をして熱いコーヒーを飲む。

そばに来た黒猫を抱え、今、この場所にいる自分を確認する。

 

大丈夫、自分は今、ここにいる。

 

 

この人の絵は、過去を連れてくる。

作者自身にそんな意図はないと思うのだが、不思議なくらい記憶とリンクする。

 

きっと、奥底で眠る鏡を引っ張り出し、自分の見たいように作品を捉えているだけなのかもしれないが、事実として心を大きく揺さぶられる。

 

忘れたい記憶が跳び箱だとしたら、僕らは年を重ねる事によって、どうにか足を引っ掛けずに飛ぶ方法を覚えたに過ぎないのだと思う。

 

憶測を誤らないようにして、ロイター板を踏みつける日々。

気が付かず疲弊していた自分に、天使が手をかざしてくれた。

 

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墓場に舞い降りた一羽の天使。

今まで生きてきて、目にした事のないこの絵に救われた。

 

十六年前の自分に手が当てられた気がして、涙が出た。

 

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灰色の街にかかる虹。

この虹は、特別な虹だ。

 

十七話が読めて良かった。

こんなに心が揺さぶられる絵に出会えて、本当に良かった。

 

どんな結末が待っていようと、自分は席を立って目一杯手を叩きたいと思う。

 

弾ける想いをくれた作者が、満開の笑顔でいられますように。

 

出逢ってくれて、ありがとう。

 

 

 

 

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