今井町公民館 ー「ミチコオノ日記」読者集会所ー

旧称:「ミチコオノ日記」読者日記もしくは私的ファンサイト

山桜

 

 

 

ですが今度は、一言も咲には
聞こえてまいりません。

咲の耳が聞こえなくなってしまったのかと、最初は思いました。

でも、そうではないようです。
それで……、分かりました。

咲は音のしないところにいるのです。
……溢れるほどのお花、
ありがとうございました。

夢の中で咲が申したかったのは、
お花のお礼でした。

咲にはもうそれだけで充分です。
本当にありがとうございました。
でも……、

その次からは、
咲のことなどお忘れください


「空知らぬ風」
山猫🐾 (id:keystoneforest) より




もちろん鬱の薬のせいかもしれない

前に前々世の わたしだという女性が

となりに寝ている夢を見た事があった

顔だけきっちりこっちを向いている

彼女の後ろには 白い本棚も見えている


「あと 何百gか 足りなかったの。」


生まれていないらしい


「それでも 前世の前世の わたし なの?」

「そうです」


そこでおそらく目が覚めているはずだが

彼女がいないだけで 視界に映るものは

何も 変わっていなかった

 

山猫さんの「空知らぬ風」を読んだとき

頭に浮かんでいたのが 夏目漱石の「夢十夜」

の第1話と この夢である

おそろしく静かな文体は 決して雰囲気を

語ることなく あくまで物語に忠実に

使われている

溺れたりしない

書き手は最後まで

自分がつくりだした 森には

入っていかない

森の奥に入っていったのは

都会の喧騒に包まれている

意識が朦朧とした わたしである

だから わたしは こう思ってしまう

咲はきっと森の奥の方では 笑っていて

正吉のいる場所までにはたくさんの

桜の木が咲いている

花びらが散れば泣いているようにも見える

風のかすかな音を聞く事ができる

さあ近づいておいで

ため息のような風である

さあ近づいておいで

かすかに 光る

 

 

 








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