今井町公民館 ー「ミチコオノ日記」読者集会所ー

旧称:「ミチコオノ日記」読者日記もしくは私的ファンサイト

繋がる

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〈文〉高岡ヨシ

 

***

 

人との繋がり

心の繋がり

体の繋がり

記憶の繋がり

出来事の繋がり

 

前に付く言葉は何だっていい。

兎にも角にも、自分は繋がりの中で生きてきた。

 

水戸黄門の最後の10分間を体現したような年子の姉を持ち、彼女の後ろに隠れて息をしていた自分は、何かを一人でやり遂げることなど出来ず、いつも変わらず目の前にあった陰を踏んで歳を重ねた。

学生になり、服を脱いだ生身の弱さを嫌というほど思い知らされた後は、どれほど状況が変わっても、何のステータスを得ても、「己の努力だけで現状を築いた」などという気持ちには到底なれなかった。

一度、思い立った時期があり、自分の内側だけに潜る時間を過ごしたが、開け続けた扉の奥にあったものは、繋がりによって生かされているという事実だった。

 

***

 

ミチコオノ氏の新作は、「繋がり」と「希望」だった。

例によって心にある鏡を通して、勝手に解釈した結果なのだが、読み終わった後にその2つの言葉が強く頭に浮かんだ。

 

氏の絵を見ていると、たくさんの記憶が蘇る。

19話で言えば、泉の白シャツから覗く赤だ。

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でしゃばった泉の顔と赤に触れると、頼んでもいない映像が湧き上がる。沸騰した鍋に差し水をするように、それらを白で塗りつぶしていると、獅子座の彼女が言葉を吐いた。

猫の目をしたサツキのひと刺し。

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白に包まれた赤は、色を無くして消えていった。

 

2年の連中の話もそうだ。

シチュエーションや陰惨さ、問題の大きさなどの違いはあるが、作中にあるように、自分も姉に救われた。

線の上ギリギリを歩いていたあの時、大嫌いだった姉に救われた。

こういった話は、よくあるものなのかもしれないし、作者も特別な意図があってそのシーンを入れたのではないかもしれないが、一つ一つの表現が真っ直ぐに響いた。

 

『2年はぼろぼろ泣きながら しきりに髪を触っとる』と表現されたこの絵。

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これを見た後、ドミノ倒しのようにいくつもの場面が連なって迫った。

 

校舎裏に現れた改造バイクの集団

不恰好になった髪を触りながらの謝罪

痛みを伴った笑顔

全て硬貨で返却された重たい袋

廊下の隅から覗く目

 

あの日の出来事が切り取られ、目の前に並べられている。

正直、冗談みたいだと思った。

自分のことを、何処かで見ていたのではないかという感覚。

氏が描き出す世界は、自分に向けられているのではないかという感覚。

そんなことはないのだと頭では分かっているのだが、そんな事実さえどうでもいいと思えるほど、このミチコオノ日記は様々な場面で自分の過去と繋がった。そしてその都度、「ちゃんと見てるよ」と言われた気分になり、不思議な安心感を覚えた。

 

世の中では色々なことが起きている。

どんなに悲惨なニュースが流れてこようと、僕らは僕らの日常の中で生き、もがいて悩んで打ちのめされてどうしようもない夜を過ごしたり、嬉しくて笑ってワクワクしてガッツポーズを作り、その場で飛んだりする。

 

繋がりは巡り巡って希望を連れてくる。

誰が何を言おうが、自分はそう信じている。

 

ミチコオノ日記は、希望だ。

リンゴもリストバンドも、立てた鉛筆も希望だ。

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真っ白な芳名帳に残されたメッセージ。記された思いが重なり合い、線になって物語は繋がる。

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廊下の先で振り返ったオノミチコ。

作品の中の彼女とは、もう会えないのかもしれない。

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例えそうだとしても、構わない。

 

自分も片寄君が飛ばした紙ヒコーキを受け取った一人。

この先、交わらなくなる日が来ても、この作品と出逢った事実は変わらないのだから。

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深海にあった希望に、最大限の感謝を送ります。

 

 

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